
6月の終わり、ふと見上げた空に、夏の気配がゆっくりと混じり始めます。
一年の折り返しとなるこの時期、わたしたちは知らず知らずのうちに、たくさんの感情や言葉を抱えてきたかもしれません。
その節目に行われるのが「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」という神事です。
半年分の“穢れ”を祓い、心と身体をととのえる——
そう聞くと少しかしこまった印象を受けるかもしれませんが、
実はこの行事、**わたしたちの暮らしにも静かに寄り添ってくれる“やさしい節目”**でもあるのです。
本日は、「夏越の大祓ってなに?心に残ったことばを、そっと祓って」というテーマで綴っていきます。
◆ 夏越の大祓とは?暮らしに寄り添う古くからの神事
夏越の大祓は、毎年6月30日に行われる神道の行事で、
その名の通り「半年間にたまった穢れ(けがれ)を祓い清める」ことを目的としています。
知らず知らずのうちに身にまとったストレスや感情、うまく言葉にできなかった気持ちもまた、
“穢れ”として考えられてきました。
多くの神社では、茅の輪(ちのわ)と呼ばれる大きな草の輪をくぐる「茅の輪くぐり」や、
自分の名前と年齢を書いた人形(ひとがた)を身体に当てて清める「形代(かたしろ)祓い」が行われています。
これは単なる宗教行事ではなく、自分自身の“気持ちの区切り”をつける知恵でもあるのです。
◆ わたしの夏越の過ごしかた
わたし自身、毎年この時期になると、地元の神社へ足を運ぶようにしています。
6月の終わりに訪れるその場所は、どこかしんと静まり返っていて、
茅の輪をくぐるたびに、目に見えない何かがすっと軽くなるような感覚があります。
ただ、仕事や日々の忙しさのなかで、どうしても神社に行けない年もあります。
そんなときは、「自分なりの夏越の祓い方」を考えるようになりました。
「どこにいても、気持ちを整えられる」
それは、きっと現代に生きる私たちにとって大切な祓えのかたちかもしれません。
◆ 忙しい人のための“わたし流・夏越の大祓”
ここからは、わたしが実践してきた「神社に行けないときの夏越の祓い方」をいくつかご紹介します。

◎ 書いて祓う
白い紙に、この半年で心に引っかかったことばや感情を書き出し、
小さく折りたたんで破る、あるいは火にくべる(※安全な環境で)。
それだけでも不思議と、心にスペースができるような気がします。
◎ 香りで整える
お香やアロマの力を借りて、空間と心をリセットする。
とくに浄化の意味合いがあるホワイトセージやヒノキの香りは、
“節目”の時間におすすめです。
◎ 小さな掃除をする
「茅の輪をくぐる=身を清める」ことと同じように、
玄関やキッチンなど、一箇所だけでも掃除してみると不思議と心も整います。
◎ 白湯を飲む
一杯の白湯で、からだの内側にたまった重たさを流すように。
それはまるで、自分の中を清める“飲むお祓い”のような感覚です。
◆ 心に残ったことばを、そっと祓って

「もういいよ」「ありがとう」「つらかったね」——
ほんとうは口に出したかったけれど、出せなかったことばたち。
心の奥にとどまっていたその響きを、夏越のこの日に、そっと見つめてあげるのも、
ひとつの祓いになると思います。
他人の言葉に傷ついたこと、自分にかけてしまった厳しい言葉。
そんな“声にならなかった想い”を、
この節目に少しずつ手放していくことができたなら、
年の後半はきっと、もう少し軽やかに歩き出せるはずです。
「祓う」とは、ただ“取り除く”ということだけではなく、
これまでの自分に静かに折り目をつけていくことでもあるのだと思います。
忙しい日々のなかでは、立ち止まる時間さえも惜しくなることがあります。
だからこそ、この節目にほんのすこしでも足を止めて、
「ここまで、よくやってきたね」と自分に声をかけてあげる——
それだけでも、十分に“祓い”は始まっているのかもしれません。
形式よりも、気持ちのあり方をたいせつに。
夏越の大祓が、あなたにとって“わたしをいたわる日”となりますように。
【まとめ】
夏越の大祓は、ただの伝統行事ではなく、
わたしたちが「ここまでの自分を見つめ直し、やさしく整えるための節目」です。
- 夏越の大祓とは、半年の穢れを祓う神事
- 神社へ行けないときは、自分の暮らしの中で祓い方を見つける
- 書く/香りを焚く/掃除をする/白湯を飲む——小さな習慣で心が整う
- 言えなかった気持ち、ためこんだ言葉を“そっと祓う”時間に
- 年の後半を、すこし軽く、気持ちよく迎えるために
言葉にできなかった気持ちに静かに寄り添い、
そっと手放す今日という日が、あなたにとって優しい折り返しとなりますように。