さみしさの奥にあったもの〜「愛されていた」と思い出した、ある日の小さな記憶〜

過去のわたし、今のわたし

「私はちゃんと愛されていたのかな?」

そんな疑問が、ふと心に浮かんだことはありませんか?
忙しかった家族、思い出せない記憶、そして、どこかにずっとある“さみしさ”。

私にも、そんな思いがずっと心の奥にありました。
それがどこからくるのかわからないまま、かなりの長い時間を過ごしていたような気がします。

でも、ある日、昔のアルバムを開いたことで、忘れていた何かと再会したのです。
こちらでは、その時の、心の旅について綴ってみようと思います。

認めてもらいたくて、一番を目指していた私

私は3人きょうだいの末っ子でした。

兄も姉も、運動神経が良くて、要領もよくて、いわゆる「良い子」で、母はいつも、そんな兄や姉と楽しそうに笑顔で語り合っていました。

その横で私は、何をするにも遅くて、どんくさくて、
「私だけ、うまくできない……」と感じることが多かった気がします。

でも、そんな自分をただ受け入れるのではなく、
私は“がんばることで見てもらおう”としていました。

いつもどこかで「一番になりたい」と思っていたのは、
ただの負けず嫌いではなくて、
“お母さん、見ててね”という願いの裏返しだったのかもしれません。

でも、現実はなかなか思うようにはいきませんでした。
仕事で不在が多かった父には勿論ですが、専業主婦でいつも学校から帰れば家にいてくれた母にでさえ、家の中で誰かに甘えた記憶はあまりありません。
泣きたい時も、気づかれないように我慢していたような気がします。

私自身の記憶の中で、私は、おとなしくて、一人遊びが得意だったと思うのですが
きっと「手のかからない子」として、母も安心して、一人遊びをする私を好きなようにさせてくれていたのかなと思います。
そのせいなのかどうかはわかりませんが、
心のどこかで、ずっとなぜか「寂しいな」と感じていました。
その理由は、当時も、大人になった今でも、はっきりとはわかりません。

アルバムの中の私と出会った日

心のなかのにずっとある「寂しさ」を感じながら、それが何なのかとあれこれ考えて過ごしていた、ある日、ふとしたきっかけで、家族のアルバムを開くことがありました。
そこには、忘れていたたくさんの古い写真が残っていました。

父の実家で親戚たちに囲まれて笑う私。
動物園でアイスを持ってニコニコしている私。
そして、小さな私が、父と手をつないで歩いている後ろ姿。

「あれ……?」

気づけば私は、その写真の中の自分を見つめて、動けずにいました。
そして、胸の奥から、何とも言えないあたたかさと涙がこみ上げてきたのです。

忘れていたけれど、
たしかに私は、あの頃、ちゃんと笑っていた。
たしかに、家族と過ごす時間があった。
父は忙しかったけれど、一緒に出かけていた。
母も、私にいつも、手作りの洋服を着せてくれていた。

思い出せなかっただけで、
私は、ちゃんと愛されていたのかもしれない。

私が私を抱きしめた日

写真の中の私に、私は心の中で話しかけていました。

「よく笑ってたんだね」
「ほんとは楽しいことも、うれしいことも、たくさんあったんだよね」
「でも、どうしてずっと寂しかったのかな……」

きっと、私は気づかれない寂しさの中で、
誰にも言えなかった想いを、ひとりで抱えていたのでしょう。
でもそれと同じくらい、小さなあたたかい愛も、確かにあった。
たくさんたくさん、溢れていたのです。

どちらも、嘘じゃなかった。
どちらも、私の本当の気持ち。

私は、写真の中の私を、心の中でぎゅっと抱きしめました。
「よくがんばってたね」「さみしかったよね」「でも、大丈夫だよ」
そう言いながら、やさしく包み込むように。

そのとき、ずっと求めていた“誰かに抱きしめてもらう感覚”を、
私はやっと、自分自身に与えることができたのです。

それからの私

あの時から、少しずつ、私の心の中でなにかが変わりはじめました。

“もっと頑張らなきゃ”
“誰かに認められないと価値がない”
そんな思い込みから、少しずつ距離を置けるようになったのです。

もちろん、日々の中で不安になったり、
誰かの言葉に心が揺れることもたくさんあります。

でも、そんなときは、心の中の小さな私を思い出します。
私の中には、いつでも私を見てくれている「私自身」がいる。
それを思い出せたことが、私にとっての、何より大きな安心になっています。

おわりに   〜あなたへ〜

私のさみしさの奥には、忘れていただけの「愛」が、確かに存在していました。

「なかった」のではなく、
「見えなくなっていただけ」だったのかもしれません。

思い出せないこともあるけれど、
それでも、自分の中にある小さな記憶に触れたとき、
私たちは、自分自身を少しだけやさしく抱きしめられるのだと思います。

あなたの中にも、そっと手を差し伸べてくれる「小さなあなた」がいるかもしれません。
その子に、こう言ってあげてください。

「さみしかったね」
「よくがんばってたね」
「ありがとう、今も一緒にいてくれて」

それは、今のあなたをあたたかく包む、はじまりの言葉になるはずです。

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