
人と比べてしまう自分に気づいて、ため息をついたことはありませんか。
SNSで誰かの活躍を見たり、身近な人の成果を耳にしたりするだけで、心がざわついてしまう。
「自分なんてまだまだだ」と落ち込む一方で、「比べたくないのに比べてしまう」という矛盾に疲れてしまうこともあります。
そんなとき、最近読んだストア哲学の本の一節が心に残りました。
それは「自分にコントロールできることと、できないことを区別する」という視点です。
今日は「比べてしまうときこそ――“コントロールできること”に立ち返る」というテーマで綴っていきます。
人と比べる心のしくみ
人は本能的に比較をしてしまう生き物です。
集団の中で生き延びるためには「自分はどの位置にいるのか」を把握する必要がありました。
その習性が現代にも残り、SNSや職場、学校で「誰かと比べて」自分の価値を測ろうとしてしまうのです。
- 「あの人はもう結婚しているのに、私は…」
- 「同じ年代で昇進している人がいる」
- 「フォロワー数が全然違う」
このように他人と自分を比べると、焦りや劣等感が生まれ、心は重くなっていきます。
ストア哲学に学ぶ視点

ストア哲学では、人間の心を軽くするために大切なのは「区別」だといいます。
- 自分にコントロールできること
思考、態度、行動、努力の方向性 - 自分にコントロールできないこと
他人の反応、結果のすべて、環境や偶然の出来事
この区別を意識するだけで、心は整理されやすくなります。
「相手がどう思うか」はコントロールできない。
「自分がどう行動するか」だけが、自分の手に委ねられている。
当たり前のことのようでいて、忘れがちな視点です。
ストア哲学の言葉に支えられて
ストア哲学者のエピクテトスは「私たちを乱すのは事柄そのものではなく、それに対する私たちの見方である」と語りました。
この一節を読んだとき、比べることで心が乱れていたのは「相手の成功」そのものではなく、「それをどう解釈したか」だったのだと気づきました。
マルクス・アウレリウスも『自省録』の中で「人は事象そのものではなく、それに抱く意見によって悩む」と書き残しています。
古代の哲学者たちも、比べる心に振り回される私たちと同じように葛藤し、その中から「心を守る視点」を見つけていたのです。
コントロールできること・できないことの具体例
比べてしまう場面を、実際に分けてみましょう。
- できること
・自分がどんな勉強を続けるか
・体調を整える生活習慣
・一日の中で努力する時間の過ごし方 - できないこと
・他人の成功のスピード
・環境の差(育った場所や与えられた機会)
・結果がどう評価されるか
比べるときの苦しさは、この「できないこと」に気持ちを奪われている証拠です。
日常での実践例
あるとき、SNSで同年代の人が本を出版したという投稿を目にしました。
「私ももっと頑張らなければ」と焦る気持ちが湧き上がりました。
けれど「相手の出版という結果は私にはコントロールできない。私にできるのは今日書く一行だけだ」と思い直すと、不思議と心が落ち着きました。
この体験を通して、「比べてしまったときはコントロールの区別に立ち返る」ことの大切さを、改めて実感しました。
視点の切り替え方法

比べてしまったときに役立つのは、次のシンプルな問いかけです。
「これは自分にコントロールできることだろうか?」
もし答えが「できないこと」なら、意識的に手放す。
「できること」であれば、小さな行動に落とし込む。
たとえば「同僚が結果を出していて焦る」なら、
- 相手の成果そのものはコントロールできない
- 自分が今日30分勉強をするかどうかはコントロールできる
こうして仕分けをすると、気持ちの向かう先が整理され、心が軽くなるのです。
ワークのすすめ
比べる心を整理するために、おすすめの方法があります。
紙を二つに分けて、「自分にできること」と「できないこと」を書き出すのです。
見える形にすると、「できないこと」にエネルギーを費やしていた自分に気づけます。
そして「できること」に集中しようという意識が自然に芽生えてきます。
さらに、1日の終わりに「今日コントロールできたこと」を3つ書く習慣も効果的です。
「朝の散歩ができた」「人に感謝を伝えられた」「余計な言葉を飲み込めた」――小さな積み重ねが自己肯定感を育て、比べる心を和らげてくれるのです。
比較から自由になる小さな習慣
ストア哲学の考えを日常に取り入れるには、習慣が助けになります。
- SNSを見る時間を減らす
他人の生活を大量に眺めれば比べる材料が増える。必要な情報だけに触れる。 - 「昨日の自分」と比べる
他人ではなく、自分の過去と比較することで小さな成長を確認できる。 - できたことを書き残す
「できなかったこと」よりも「できたこと」を日記やメモに残すと、比較の矛先が自分に戻る。
これらはすべて「自分にコントロールできること」に意識を戻す行動です。
比較に気づいた瞬間をチャンスに
人と比べたとき、「あ、また比べてしまった」と気づくこと自体が大切です。
その気づきは、心をコントロールできるスタート地点。
「自分ができることに立ち返ろう」と思い出せれば、その瞬間に比較はただの「合図」に変わります。
比べてしまうことは失敗ではなく、「自分の軸に戻るチャンス」なのです。
まとめ
本日は「比べてしまうときこそ――“コントロールできること”に立ち返る」というテーマで綴ってみました。
- 人は本能的に他人と比べてしまう
- ストア哲学は「できること・できないこと」を区別する視点をくれる
- できること=自分の行動や思考、できないこと=他人の反応や結果
- 比較したら「これは自分にコントロールできるか?」と問いかける
- SNSを減らす、昨日の自分と比べる、できたことを記録する習慣が助けになる
- 比較に気づいた瞬間こそ、軸に戻るチャンス
人と比べる心は、なくすことはできません。
けれども、視点を少し変えるだけで「比べる心」に縛られずにいられるのです。
どうか、比べてしまったときは「コントロールできること」に立ち返って、自分をやさしく整えてみてくださいね。
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